歩み


俺は勉強が嫌い。
親父に「勉強をしろ」と言われるとヤル気が起きない。
だから適当に勉強をして、適当な順位を取っていた。


俺が悪い順位を取っても富田は俺を責めることはない。
責めることが出来ないからだろう。
でもきっと親父からは責められているはずだ。
だからこの条件にしたのだろう。


けどいきなり3位までに入れって…
無理だろ?はっきり言って。



「歩さんなら出来ますよね?先生の息子なのですから」



白い歯を見せて、にこりと笑う富田。
こいつもいろいろ考えたんだな。


もしここで「やっぱり要らない」と身を引いてしまったら、俺はもう沙紀との距離は縮まることはなくなる。


それも嫌だし、勉強をするのも嫌だ。


二つに一つ。
人生はまさしくこの通りなのだと改めて思った。



「…分かったよ。
一ヶ月後の中間テストで3位に入ってやるよ」



「約束ですよ?もし結果がダメでしたら、その日に携帯を解約しますので」



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