歩み
数分後、家政婦が俺の部屋のドアを二回ほど叩いた。
その音に気付いた俺は、横にしていた体を起こして、こう言う。
「入れば??」
「おはようございます。今日もいい天気ですね」
年齢不詳の家政婦が俺の部屋に入ってくる。
持っていた朝食をテーブルの上に置いて、部屋のカーテンを開け始めた。
今日も快晴か。
さっき家政婦が言った言葉は嘘ではなかったようだ。
家政婦はそのあと、クローゼットの中から学生服を取り出して、俺に渡してきた。
その顔には、小さい笑みを浮かべて。
この家政婦も俺が小さいときからいるが、未だに心を開けないでいる。
なぜだろう?
俺が人間を信じていないからだろうか?
「今日から二年生ですね。頑張って下さい」
笑顔で言う家政婦を俺は睨み付けて、持っていた学生服を奪った。
助けてもくれないのに、俺に触れようとするなよ。
庭に咲く、桜の花びらが散っていった…。