歩み


きっと誰でもなれるさ。俺は今までの笑っていなかった時間を取り戻す。

たくさん笑いたい。



秘書室を出て、自分の部屋に向かう俺。
無駄に長い廊下を歩いていき、部屋に着いたら自由だ。

ちょっとした自由だけど、今の俺には不満すら漏らせない。


「疲れた…」


交渉は成立したけど、まだまだ壁が残っている。まずは勉強。

そして一番重大なことは、沙紀の連絡先を聞くことだ。
沙紀は携帯を持っているはず。
ポケットからハートのストラップが見えていたから。


どうやって聞こうかな?

頭の中はそればかり。

窓から射す光で、部屋がいつも以上に明るく感じる。
それは俺の心がいつもより明るいからかな?



思い出す、あの光景。
思い出す、あの感触。


沙紀の表情が、俺の中を埋め尽くす。
沙紀の唇の感触が今でも残っている。




沙紀、俺はお前の中に入れるのかな?



翌日、俺の人生の中で最高の日となったんだ。
あの嬉しさは今も忘れていない。



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