歩み
つい笑いそうになってしまった。
家政婦のつまらない冗談なのか、本気の言葉なのか、それすら分からないけど、なぜか笑えてしまった。
もう、返す言葉すらない。
目に映る親父の姿。
アナタの顔を見るのはいつぶりですか?
テレビだからだろうか。好感度を上げるつもりだろうか。
視聴率を上げるつもりだろうか。
正当な答えを並べて、ニュースキャスターと真面目な話をして…。
アナタは面白いですか?
無駄だよ、アナタを嫌いな視聴者はここにいるのだから。
今の教育方針が間違っている、と語る親父を睨み付ける俺。
お前に世界が変えられるのか?という言葉を投げてやりたい。
アナタはなんて返すだろうか?
そう言った俺からまた自由を奪うのか?
「歩さん、どうかされました?」
突然、俺の視界に入る年齢不詳の家政婦。
俺は冷めた目付きで家政婦を見上げ、首を横に振った。