夫婦の始まりは一夜の過ちから。
□Kiss
タクシーに乗り初めてから約10分後、大きなマンションの前でタクシーは停車した。
たぶんここはアイドルが住むマンションなんだ…、とタクシーの窓から見上げていると。
「―…めちゃん」
「……」
「降りないの?」
アイドルは私の掌をぎゅっと握りながらそう言った。
タクシーに乗る時に私の手を握ったアイドルはそれからずっと握ったままでいる。
最初はドキドキして居心地が悪かったけど、いつの間にかその温もりに落ち着けて、ずっとずっと握られたままがいいのにと思ってる私が――
「夏芽ちゃんって」
「うん」
「もしかして手繋ぐの嫌?」
あまりにも繋いでいる手を見ていたからかアイドルはそう勘違いしちゃったみたいだ。