夫婦の始まりは一夜の過ちから。
Lonely
「本当に戻らなくていいの?」
「いいの。何度聞かれようが答えは変わらない」
玄関先で眉を顰めた壱はなかなかスリッパを脱ごうとはしない。
でも私はそんな壱をお構い無しでコートについていた糸屑を払い、壱の腕を掴み腕時計に視線を向けた。
「ほら、もうこんな時間。早く出ないと遅刻するよ」
「……」
「もう〜。壱が遅刻してとやかく思われるのは壱じゃなくて私なんだから」
壱のマネージャーは絶対に心から私の事良く思ってないと思うし、だからこそ壱の遅刻はあってはならない。
行こうとしないのは壱だとしても。
私が原因でそうなった=私の責任になってしまいマネージャーさんはより私を嫌う。
「明日、御節作って待ってるからね」