不器用なぼくら
始まりの日
春 桜の舞う季節

私はあるお店の前に立っていた





「ここだ…私が働くお店…」




田中みお 22歳


正社員で働いていた会社をつい最近辞めた


世間一般で言う「プー太郎」という奴だ


でもこのままじゃいけない


とりあえず働こう


それだけだった











お店の名前は「kagayaki」


1階がカフェ 2階が雑貨


という事しか分からないけど


割と小さくレトロなお店だった


ここにした決め手は


一人暮らしの家に近くて


偶然にもバイトを募集していたから


と、いう理由


迷わずすぐ電話をかけて


何故か即合格をもらえ


本日が初出勤







みお「よし 頑張らなきゃ」


私はゆっくりお店の扉を開けた







キィ







みお「わぁ…」







お店の中は外観同様


とてもレトロな作りだ


カウンター席とテーブル席


数はあんまり多くないけど


空間としては素敵だ


あ…壁にボードがある


メニューとイラストが少し




みお「ん…?何だろう、これ」




隅っこに書いてある文字

"たろーのひとこと

履いた靴下に穴が開いてた"





一体何なんだこれ







あ、待て待て


とりあえず誰か呼ばなきゃ



みお「あの…すみません」







応答がない


まだ誰もいない?


いやでも…おかしい


鍵開いてたんだもん









みお「す、すみません!」









やっぱり応答がない


おかしいな…


まさか今日休みなんて事


有り得ないよね?








不安になって壁の時計を見てたら


二階から階段を降りる音がした


よかった、人ちゃんといた






「あーヤバいヤバ…あれ?」








階段から降りてきた人と目が合った


挨拶…しなきゃ!


みお「お、おはようございます! 私今日から働く田中みおです!」








相手はキョトンとして


私を見つめた


茶髪のツンツンヘアーが


印象的な彼


ここの従業員みたい











「え、俺全然分かんねぇや。とりあえず2階の店長ん所行こ」



みお「あ、はい!」




茶髪のツンツンヘアーが


ゆっくり揺れていた


それを追いかけるように


私は彼の後に続いて2階に向かった
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