不器用なぼくら
薫「何かさ上手くいかないよな」



幸宏「何が?」



薫「人を好きになる事だよ」




びっくりした



薫君がそんな事言うと思わなかった




薫「ただ好きなだけなのに。報われないってキツいよな」




幸宏「薫君も・・・誰か好きな人いるの?」




薫「まぁね」




そうなんだ 




何だか意外だった




薫「でもさ、まず自分の気持ちは大事にしたいよな」




幸宏「自分の気持ち?」




薫「うん。だって自分の気持ち自分が否定したら苦しいだけだろ」




幸宏「まぁ・・・そうだけど」




薫「そんでいつかさ、届けばいいんだよ。俺らの気持ちが」




何だか



薫君の目が遠くを見つめていた




一体誰を思ってこの話をしてるんだろうって




すごく気になったけど




薫君はどうやら“叶わない恋”とやらをしてるみたいだ



それだけは分かった




















幸宏「はぁー食った食った!」




薫「うまかったなあの店」




幸宏「だよな~俺らも頑張らないとだよね!」




薫「そうだな」




幸宏「あ!でも俺!薫君には負けねーから!」



薫「またその話かよ!」




幸宏「あははは!!」




ちょっと 心が軽くなった気がした



すると視界の中にあの姿が入ってきた




間違いない




由美ちゃんだ





薫「あれ?あそこにいるのって・・・由美ちゃんだよな」




幸宏「隣に・・・男の人いる」



俺らがいるお店の向こう側に歩いている後ろ姿



あれ?



あの男の人・・・誰かに似てる気がする




幸宏「お・・・俺ちょっと!!」



薫「あ、おい!ユキ!」




俺はいてもたってもいられなくなって小走りにあとを追った



















だいぶ歩いてから




由美ちゃんは隣にいる男の人の手を引いて路地裏に入っていった




いけないと分かっていても俺の足は2人を追いかけ続けていた




静かに耳を傾けると声が聞こえてくる




2人が喋ってるんだ




すると由美ちゃんは男の人に抱きついた




そして   キスをした




由美「・・・大好き」





それは




俺がずっとずっと聞きたかった言葉




由美ちゃんから俺に向けて言って欲しかった言葉




胸にナイフが刺さったみたいに痛かった




すると




俺の胸を更に引き裂く様な声が聞こえた

















「由美、俺ら・・・別れよう」

























廉の声だった


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