泣いていたのは、僕だった。
プロローグ
――めずらしいモノを拾った。
酷く高飛車な、けれどどこか不安げな目をしたモノだった。
目があった瞬間、何かに惹かれるように僕は立ち止まった。
そして声をかけていた。
「一緒に来る?」
それはゆっくり体を起こして、僕を睨んだ。
一瞬の間が、何時間にも感じられた。
睨み合いが終わったのは、それがふっと意識を失ったから。
僕はそれを抱えて、家に運んだ。
僕は今日――ヒトを拾った。
『泣いていたのは、僕だった。』