泣いていたのは、僕だった。




“DJSI”……表向きは株を扱う会社。社員数160名。



「裏じゃ随分えげつない事やってんじゃん。」


隆が資料に目を落とし、感心したように呟いた。


「感心する所じゃないですよ。」
「はいはい。それより真司の奴大丈夫かよ?」
「大丈夫ですよ。朝まで起きませんから」



にっこりと創は微笑んだ。



「コーヒーに睡眠薬入れておいたので。」



俺と隆は目を合わせて、無言で頷いた。


“創は敵に回さないでおこう”という合図だった。



実際真司は勘がいいから、こうまでしないと絶対気付かれるしな。


資料取りに行くだけで大分手間取ったし。



「で、どうすんだよ?」



月光に照らされたビルを見据えて、隆が訊いてくる。



「とりあえず外から中の様子を伺ってから動いた方がいいよな。」
「翔一の言うとおりですね。異論はありませ――あっ」



言葉の途中で創は声を上げた。


「んだよ?――あ」



創の指した方向を見て、隆も固まる。

振り向いた俺も同じ反応だった。



「こんな所で何してんだ?あ゙?」



俺達三人を取り囲む数十人の屈強な男たち。



「あー……これヤバくね?」


肩を落とす隆。


「みたいですね。」



創は両手をあげて、引き笑いをした。




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