泣いていたのは、僕だった。
その男は茶色の髪をして、白い肌で、色素の薄い瞳を持っていた。
俺は一瞬にして、この男に恐怖した。
笑っている目元が……
氷のように冷たくて。
真司よりも冷たい目をする、この男が怖いと思った。
「まだ殺しちゃダメだよ。」
「静さん………」
静――!
じゃあこの男が古林 静…。
真司の弟。
「ですがコイツが」
「――うるさい。口答えするなら、お前から殺してやろうか?」
「すみませんでした!」
顔色を変えて俺の襟首を離すと、男は部屋から出て行った。
「さて、初めまして。古林 静です。って知ってるよね。知ってて来たんだもんね。」
静は喉で笑った。
「あー、自己紹介はいらないよ。神木翔一くん。」
「――!なんで名前……」
「知ってるよ。そっちの二人も。矢代創くん、櫻井隆くん。当たってるだろう?」
クイズ番組の解答者のように、楽しそうに俺達の名前を言い当てた。
「随分と詳しいじゃん。」
「まぁね。ずっと待ってたんだ。来てくれるのを」
静は俺の顔を覗き込んだ。
「真司を壊すためには、君たちが必要なんだ。」
「真司を……壊す?」
「そう。面白そうだろう?」
静は尋ねつつ、俺の懐から携帯を取り出した。