泣いていたのは、僕だった。




拘束された俺達が何か出来るわけもなく、時間は虚しく過ぎていく。


再び静が部屋に戻ってきたとき、その手には黒い銃とナイフが握られていた。



「そろそろ来る頃かな?」


楽しげに語る静は、不気味で正直怖かった。



「なぁ、」



隆が静を睨んで口を開いた。



「お前ら兄弟だろ?なんでそんなにアイツを憎む?」
「君達は真司のこと何も知らないんだね。」
「あ?どういう意味だよ?」
「アイツはね、俺の大切な人を奪った。奪ったんだ!!人の大切な人を平気で奪う……アイツこそ、正真正銘の悪魔だッ」



最後は吐き捨てるように静は言った。



「真司が初めて殺したのは誰だか知ってる?」



沈黙は俺達の答え。

静は勝ち誇ったような微笑みをみせた。




「真司が初めて殺したのはね、実の母親だよ。」



その言葉は鮮明に、俺たちの耳に届いた。



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