泣いていたのは、僕だった。
なのに、俺も創も隆も……声を発せなかった。
「やっぱ知らないんだね?真司のこと何も。――っと、外が騒がしくなってきたね。」
確かにドアの外から慌ただしい足音がする。
そして、ドサッと何かが倒れる音。
「真司が来たみたいだね。」
静の無邪気さが、雰囲気とあまりにもかけ離れていて…
情けない話だけど、俺は怖かった。
この古林 静という男が。
「さて、どう来るかな?」
静は楽しげにナイフに舌を這わせる。
部屋の入り口は二つ。
俺達の背中側のドアと、それに向かい合う静の背中側のドア。
さっきまでの騒がしさは消え、ドアの向こうは静まり返った。
数分が経って、静の背中側のドアはゆっくり開いた。
瞬時に静は持っていた銃を突きつけた。
わずかな隙間から見えたのは見知らぬ男。
その直後、静は口で笑みを作り、俺たち側のドアへ向き直る。
俺たち側のドアは勢いよく開けられた。
「そっちかな!」
静の銃が放ったのは二発。
弾が貫いたのは、またしても見知らぬ男だった。
「チッ――」
「――残念だったね。」
その声は静の背中から。
「「「真司!」」」
「はーい。みんな元気そうだね。」
静に銃口を突きつけたまま、真司は飄々と笑っている。
足元には静側のドアから顔を見せた男の死体。
俺たち側のドアから顔を覗かせた男も、まともに弾を喰らって、床に倒れた。