泣いていたのは、僕だった。
side真司
―真司side―
「ダメだ!」
翔一の声で、僕は引き金にかけていた指の力を緩めた。
「翔一?」
「そいつ弟なんだろ?兄弟だろ?だったら殺しちゃダメだ!!」
「…………」
翔一の欠点はこの甘いとこなんだよね。
「あ、そっか。この子誰かに似てると思ったんだ。」
静が笑って、僕に振り返った。
「この子さ、須田 千明に似てんだね?」
その名前に僕は目を見張った。
どうして……
「どうしてその名前を知ってる?」
「えー、だって」
可笑しくて堪らないといった様子の静。
「アイツ死ぬように仕向けたの俺だもん。」
「…………………」
「ほら、真司頭殴られなかった?あれね、俺だよ。本当はあの時殺せたんだよ。でも生かした。もちろんわざとだよ。」
「………ごめん、翔一。やっぱり殺すね。」
次に僕を止めたのは、創くんだった。
「復讐なんて虚しいだけ、って僕に言ったのはアナタですよ。」
「………揚げ足だ。」
「僕はそういう性格なんです。」
微笑まれると肩の力が抜ける。
「甘いなぁ。真司もいつからそんな甘いやつになったわけ?」
静が不満を露わに僕を見る。