泣いていたのは、僕だった。


外にサイレンの音が鳴り響き始めた。



「皆保警部に連絡しといたんだ。静、どのみち逃げられないよ。君の仲間はもう誰もいない。」
「……っんと気に食わないな。」



盛大な舌打ちをした静は僕の懐に飛び込み、手にしていたナイフで僕の頬を薄く切った。



「こんなんじゃ許さないから。もっと苦しませてやる。」



低く囁いた静は勢いのまま、部屋から出て行った。



血が頬を流れる。


まるで涙のように。



「真司!」



翔一の声で正気に戻る。




「大丈夫か?切れてる」
「平気だよ。逃がしちゃったけど」
「おっちゃん来てんだろ?逃げられるはずないって。」
「………うん。」




けっきょく静はそのまま消息を絶った。



僕は、やっぱり間違ったんだろうか。




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