泣いていたのは、僕だった。




「僕が……?」


真司にいつもの何を考えてるか分からない笑顔はない。



真司は勘違いをしてる。


『真司が言っていましたよ?あの日は視界がぼやけてたから、雨が降っていたって。』


創が言ってた。
でも……



「あの日雨なんて降ってなかった。」
「……………」
「視界がぼやけていたのは、――お前が泣いてたからだよ。」


真司は数秒の間、固まったまま俺を見た。



「……泣いてた」
「そうだよ。あん時お前……俺を見つけて、ずっとこっち見て、突然泣いたんだよ。なんか勝手に涙が出てきたみてーだった。」
「………」
「意味わかんねーから、なんで泣いてんだって手を伸ばした。そしたらお前が手を取って言ったんだ。一緒に来る?って。そのまま気失っちまったけどよ。」




目が覚めたとき、あまりに印象と違うやつで警戒した。
泣いてた奴とまるで別人だったから。


「なぁ、何であの時泣いてたんだよ?」


その問いに真司は分からないと答えた。




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