泣いていたのは、僕だった。
「お前が手を伸ばせば、掴んでやるから。その手」
翔一は笑った。
「創も隆も掴んでくれるよ。俺、思うんだ。こういうの仲間って言うんだなって。」
翔一は月を背に言った。
でも僕は、太陽の方が似合うのにって思った。
「………ほしかった。」
翔一は首を傾げた。
「ずっと誰かに助けてほしかった。気づいてほしかった。大切な人が欲しかった。」
僕の頬に触れていた手を掴む。
「僕にとって大切な人はみんな死んだ。母さんを僕は殺してしまった。千明を死なせてしまった。それに…静を傷付けた。」
いつもうまくいかない。
「大切にするって難しいね。」
思いとは逆になってしまう。
そう言うと翔一は喉で笑った。
「安心しろよ。」
「え…………」
「創も隆も簡単に死んだりしねーよ。それに俺も。むしろ俺はお前を殺そうとしてるんだからな。」
本当はもう助けられていたのかもしれない。
翔一を拾った日、
創くんと隆くんに出会った日、
いつの間にか当たり前になった四人でいる日々に。
ただ、僕が気付けなかっただけなんだ。
「ありがとう。」
「真司が素直だと変な感じ。」
「酷いなぁ。」
「本当のことだし。向こう行こうぜ。創と隆も心配してる。」
力一杯引かれ、僕は強制的に立ち上がらせられた。
「え、ちょっと、待って」
「なに?」
「いや、この顔じゃ僕あからさまに泣きましたって感じでしょ?せめてもう少し待ってくれても」
「そんなことかよ。いーじゃん、たっぷり見てもらおうぜ。今まで心配かけた分、人バカにしてきた分、存分にバカにされろ。」
楽しげに翔一は言った。
なんだか僕も楽しくなった。
今まではどんなに楽しくてもすぐ飽きた。
ゲームだって熱中してもすぐ冷める。
でもこの楽しさはずっと続く気がした。
そんな気がした。