泣いていたのは、僕だった。



―真司side―


「そろそろ話せよ。隠し事は無しだぜ?」



隆くんの言葉で僕は口を開いた。



僕と静は……異母兄弟でね。

母は違うけど父が一緒。

この父親ってやつがろくでもない奴で、母さんと僕をそっちのけで遊び歩いてた。


静はそのとき遊んだ女と作ってしまった子。

たぶん向こうの女の方に何かあったんだろうね。
僕には分からないけど……。


それで静はこっちで引き取ることになった。


僕は正直嫌だった。


でも……


“私達が愛してあげなくちゃ。誰があの子を愛してあげるの?私はあの子を愛すわよ。”



そう母さんが言ったから。


“真司、アナタの弟なのよ”



僕は彼を愛すことにした。




そして僕が八つの時、彼は引き取られてきた。


当時の彼は、ずっと寂しげだった。


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