泣いていたのは、僕だった。



母さんは惜しみなく愛情を注いでた。

僕も本当の弟のように静に接した。


徐々に彼も心を開いて、幸せな家族を作り上げた。


この時の母さんの口癖は


“あなた達は兄弟なんだから、支え合って生きていかなきゃダメよ。”


だった。


僕は母さんが望むなら何でもすると心に決めていた。

この世で唯一の絶対的存在。


何があっても守ろうと誓ってた。


しばらくは平和な時間が流れた。


僕らは近所でも有名なぐらい仲のいい兄弟だった。



……それが崩れたのは、僕が高校に入学して間もなくだった。


静の母さんに対する態度が変化し始めた。


異常なまでの愛情をぶつけ始めた。


親子愛ではなく、一人の女性として母さんを見始めたんだ。



母さんも最初は相手にしていなかった。

でも静の行動はエスカレートしていくばかり。

必要以上に抱きついたり、キスをせがんだり……。


母さんは頭を悩ませてた。


僕には話を聞いてあげることしかできなかった。



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