泣いていたのは、僕だった。




そして……
静はとうとう母さんを襲った。

寝静まった真夜中に、静は母さんの寝室に忍び込んで…。


悲鳴を聞いて、僕が途中で止めに入った。


けど遅かった。


母さんの心には深い傷が残った。



僕は謝った。

守れなくてごめんって。

その言葉は母さんには届かなかった。



ある夜。
運命の夜。


母さんは僕を呼んだ。


そして泣いた。



“真司、私辛いのよ。どうして……どうして……っ”


僕は肩を叩いてあげることしか出来なかった。


耐えきれなかった僕は言ってしまう。

悪魔のような言葉を。



“母さんが望むなら、僕は何だってやるよ。”



母さんは僕に縋った。


本当に何でもしてくれるのかと。


頷いた僕に母さんは言った。


“解放してほしいの。真司、私を殺して”



さすがに僕は瞠目したよ。



“僕に……母さんを殺せって言うの?”
“お願い……っ。私は辛いのよ。アナタも静も大切だから……私は………”



それ以上母さんは何も言わなかった。



僕は瞬時にもう一つの選択を思いついた。


静を殺す、という選択を。



けれど母さんはそれを望まなかったから。



だから…………



< 122 / 150 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop