泣いていたのは、僕だった。
そして……
静はとうとう母さんを襲った。
寝静まった真夜中に、静は母さんの寝室に忍び込んで…。
悲鳴を聞いて、僕が途中で止めに入った。
けど遅かった。
母さんの心には深い傷が残った。
僕は謝った。
守れなくてごめんって。
その言葉は母さんには届かなかった。
ある夜。
運命の夜。
母さんは僕を呼んだ。
そして泣いた。
“真司、私辛いのよ。どうして……どうして……っ”
僕は肩を叩いてあげることしか出来なかった。
耐えきれなかった僕は言ってしまう。
悪魔のような言葉を。
“母さんが望むなら、僕は何だってやるよ。”
母さんは僕に縋った。
本当に何でもしてくれるのかと。
頷いた僕に母さんは言った。
“解放してほしいの。真司、私を殺して”
さすがに僕は瞠目したよ。
“僕に……母さんを殺せって言うの?”
“お願い……っ。私は辛いのよ。アナタも静も大切だから……私は………”
それ以上母さんは何も言わなかった。
僕は瞬時にもう一つの選択を思いついた。
静を殺す、という選択を。
けれど母さんはそれを望まなかったから。
だから…………