泣いていたのは、僕だった。
side隆
―隆side―
――最近ね、煙草が美味しく感じないんだ。
一緒に喫煙を求めてきた隣の奴は、煙を吐いてそう言った。
「別に不味い訳じゃないんだけど……前より美味しくないんだよね。」
「これを機に禁煙でもしてみたらどうだ?」
俺自身も煙を吐いて、冗談混じりに提案する。
「んー…それもありだね。」
「ははっ、マジかよ。まぁ、結局は無理なんだろうけどな。」
「僕もそう思う。」
しばらく沈黙が流れて、俺は一つの疑問をぶつけることにした。
「お前がさ、前に俺に言ったこと覚えてっか?」
「なんか言ったっけ?」
「“人が人を救ったと思うのは、ただのエゴにすぎない。誰かを救う、なんて誰にも出来やしない。”そう言ったろ?」
「ああ」
真司は思い出したように、そんなことも言ったなと笑った。
「あれ、おめぇの事だろ?」
「………さぁ?」
相変わらず真司は月を見上げ呟く。
「あのとき言ったじゃない。僕は僕の考えを言っただけだって。僕は常にそう考えてるってことだよ。」
それ以上の意味はない、と真司はまた口を閉ざした。