泣いていたのは、僕だった。
「…あ、」
男は思い出したように手をたたいた。
「なんだよ?」
「こんな所で何してるんです?今、ここら一体は危ないですよ。」
……おいおい、おめーが一番危ねえよ。
「ちょっと野暮用だ。てめーには関係ねーよ。」
「はぁ、そうですか。でもねー…僕も仕事なんでね。今すぐいなくなっていただけると、助かります。」
のほほんとした喋りが俺を苛立たせる。
「俺は退く気はねーよ。」
「死ぬかもしれませんよ?」
「そう簡単にくたばってたまるかよ。」
吐き捨てるように言うと男は肩を竦めた。
「まぁ実際どうでもいいんですけど。」
だったら最初からほっとけよ………。
「てめーこそ何やってんだよ。」
「僕ですか?さっき言いましたよ、仕事です。」
「こんな真夜中にか?」
「真夜中だから、ですよ。」
「?」
ほんと、コイツ何もんなんだよ?