泣いていたのは、僕だった。
「その千明ってやつとさ、俺ってそんなに似てんの?」
静に言われたことを気にしていたんだろう。
それを一番聞きたかったんだな。
「似てる……と言えば似てるけど、似てないと言えば似てないかな。」
それじゃ答えになっていないと翔一は不服そうだ。
「最初はね、千明が戻ってきたみたいだった。正直、重ねてみてたよ。」
「……………」
「でも全然違った。千明は千明で、翔一は翔一。僕は翔一にたくさんのこと教えてもらったし。」
「例えば?」
切り返しの言葉に、少し間を空けた。
「ご飯を食べる事とか」
「あー…そう言えばこの家来たとき食材一切なかったな。サプリメント食ってたんだろ?」
「うん。昔からね。千明には怒られてた。」
「だろうな。」
笑う翔一に釣られて僕も笑う。
「じゃあ千明ってやつの代わりってわけじゃない?」
「代わり?まさか。翔一は翔一だよ。」
「そっか。………あのさ、」
「ん?」
翔一は躊躇うように一度口を噤んだ。
「………俺、ここが好き。隆と創と真司がいる、ここが好きだ。俺の居場所だって 思ってる。」
「…………」
「大切なんだ、この場所が。」
そんだけ、と翔一は中に戻っていく。
大切………。
僕も大切だと思ってる。
大切だからずっと一緒にいたいと思うのと同時に、
殺してほしいと願ってしまう。
どうすればいいのか、自分でも答えを見つけられないんだ。
新しい煙草に火をつけた。
「……やっぱ美味しくないな。」