泣いていたのは、僕だった。
角を曲がった路地裏に創の姿があった。
「創………」
呼びかけに反応はない。
ビルの壁に背中を預けて、両腕両足を力なく投げ出している。
怪我をしているんだろう。
血痕が垣間見える。
身に着けている服も、血やら泥やらで汚れきっている。
駆け寄って肩に触れた。
「創?おい、創!!」
「…………」
微かに瞼が持ち上がった。
「………隆」
「大丈夫か?」
「どうでしょうね。」
創は笑って言うが、ダメージは相当なものだ。
「……真司、は?」
「大丈夫だ。翔一に任せてある。」
「そうですか。」
こんな時まで人の心配とはな。
「お前がそこまでやられるなんてな。」
「全くですね。多数ってのは少々卑怯です。」
「そりゃ卑怯だな。立てるか?帰って手当しねーと」
創は首を横に振った。
「ダメですよ。この怪我で帰ったら、心配かけますから」
「お前、やっぱりバカだろ。」
「アナタほどじゃないですよ。」
創の腕を肩に回し、身体を支えて立ち上がらせる。
「痛ッ…………」
「少し我慢しろ。どっか休める場所に運んでやるから。」
「もうちょっと優しくお願いしますよ。肋骨イっちゃってるみたいなんで。」
「ったく……」
本当馬鹿だよ、俺もお前も。
日の光は嫌なほど俺達を晒した。