泣いていたのは、僕だった。
それでも翔一は躊躇うように口を開かない。
さらに追い打ちを掛けようとしたとき、携帯がバイブした。
ディスプレイには見たことのない番号。
……誰だ?
不審に思いつつも、携帯を耳に当てる。
「…もしもし?」
『もしもーし、真司?俺だよ、俺。』
「悪いけどオレオレ詐欺に構ってる暇はないんだ。」
冷たく言うと電話越しの声は笑った。
『冷たいなぁ、兄さん。』
「静、今僕は機嫌が悪い。怒らせないでもらえる?」
僕が発した名前に翔一が反応した。
心配そうな面持ちで僕を見ている。
「で、何の用かな?」
『そう焦らないでよ。また、大切なものなくしちゃうよ?』
「それはどういう意味かな?」
『まさか気づいてないわけじゃないだろ?真司の大切なもの、早くしないと壊しちゃうから。』
「……創くんと隆くんのことかな?」
努めて冷静に僕は言葉を紡ぐ。
『ピンポーン!四条ビルで待ってるよ。一人で来ても良いし、真司の一番大切なモノを連れてきてもいいよ。』
切れた電話。
力一杯携帯を握りしめた。