泣いていたのは、僕だった。




四条ビルは二階建ての小さなビルだ。


ビルを見上げて拳を握りしめる。


「ダメだ。隆も創も出ねぇ。」


隣で翔一が携帯を手に、呟いた。



「ま、二人なら大丈夫だろ。」
「うん。だといいけどね。」



期待はしない。


期待をして外れたとき、立ち直るのは辛いから。



「……真司」


躊躇いがちに翔一が僕を呼ぶ。



「分かってるよ。目的は静を捕まえること。殺し合いは、避けたいからね。」


笑いかけると翔一も微笑みを返した。


「分かってんならいいんだ。」
「行こうか。」
「ああ」



閉ざされたビルのドアに手をかけた。



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