泣いていたのは、僕だった。
錆びた金属音を立ててドアが開く。
暗い室内。
この部屋には誰もいないようだ。
「静の奴、二階かな?」
「翔一、油断しないでね。」
「分かってるって」
二階へ続く階段は右手側奥に設置されていた。
僕が前を歩いて、一段一段上がっていく。
息を殺して、二階の扉の前に立つ。
目配せをして、翔一と頷き合う。
それを合図にドアを蹴破った。
中は何もない、空っぽの部屋だった。
「誰も………いない?」
逃げたのか?
いや、まさか………。
「――痛っ………!?」
「――――!?」
後方からの翔一の声に銃を構えて、振り返る。
「………静」
「はーい、油断大敵だよ。」
翔一の両手を拘束して、静自身は翔一の陰に隠れている。
「何だよ、これ!?外せよ!人を盾にすんな!!」
「えー?だって怪我したくないし。あ、力任せに引っ張っても無駄だよ。それ本物の手錠だから。」
「ふざけんな!はーずーせー!!」
「本当に元気いいね。でも、ちょっとうるさいかな。」
こめかみに銃を当てられて、翔一は口を閉ざした。
「あ、大人しくなったね。」
「静、それはちょっと物騒だよ。」
「こっちに銃向けてる人に言われたくないね。」