泣いていたのは、僕だった。
静の体は翔一で隠れてる。
撃てば翔一を巻き込む。
「真司さ、俺を捕まえようとか甘い考え持ってたろ?ダメだよ、そんなんじゃ。」
「……………。」
「俺たちの間では死ぬか生きるか。その二択さえあればいいんだ。」
生きるか、死ぬかの二択……。
「なら、死ぬのは静……君の方だね。」
引き金に指をかける。
「へぇ、撃つの?真司の一番大切なものが、犠牲になるよ?」
大切なもの………。
やっぱり僕には、守り方が分からないな。
「静…僕にとっては君も大切にしたかったんだ。」
「な……に?」
「………翔一、ごめんね?」
僕がそう言った刹那、翔一は笑って、気にすんなと言った。
瞬間、僕は引き金を引いた。
回数にして二回。
一発は翔一の左足に、もう一発は翔一がバランスを崩したことにより盾がなくなった、静の胸に。
こういう時、自分の腕がちょっと恨めしい。
心のどこかで外れればいいと願っていた自分がいた。
残念ながら、弾は的中。
目の前で二人の人間がバランスを崩して倒れる。
口から血を流す青年が僕を睨んだ。
“許さない”
そう瞳が訴えかけてくるようだった。
「ごめんね。償いはするよ。」
これで三人目だ。
大切な人を失うのは。
静の胸元から小さな鍵を取り出し、僕は目を背けて、翔一の元に歩み寄った。
「翔一、大丈夫?」
膝を突いて顔を覗くと、その表情は険しかった。
「痛ぇよ、ばか。」
「だから謝ったでしょ、最初に。」
手にしていた鍵で手錠を外す。