泣いていたのは、僕だった。
―真司side―
銃声の音と同時に櫻井は走り出した。
翔一が後を追ったので、僕もダルい足を動かして後をついて行く。
途中、櫻井は翔一に出会ったのが矢代創だと言った。
この櫻井って男は矢代創と何らかの繋がりがあるわけか。
前を走る櫻井に声をかける。
「あのぉ」
「あ?」
「矢代創ってそんなに大切な人?」
「……そんなんじゃねーよ。」
「そうは見えないけど?」
「てめーには関係ねーよ。」
櫻井の走るスピードが上がった。
嘘つけないタイプ…
翔一と同じだ。
ボクの隣を走る翔一に目をやる。
「なに?」
「はははっ……何でもない。」
「相変わらず何考えてるか分かんねーな。」
ビルが並ぶ通りで櫻井は立ち止まった。
「どのビルだよ……!」
まるで合図をするように、再び銃声が鳴った。
「どうやらあのビルみたいだね。」
僕が指したビルへ櫻井は考えもなしに突っ込んでいく。
「あ、おい!あぶねーって!!」
制す言葉をかけた翔一の肩を叩く。
「無駄みたい。冷静さを忘れてる。」
「ったく……で、俺達はどうするわけ?」
「うーん…あんまり作戦練ってる暇はないみたい。」
「決まりだな!正面突破!!」
まるで遊園地に入場するように、翔一は櫻井の後を追ってビルに入っていった。
「冷静であっても結果は一緒か……」
しょうがないと、僕も後を追っていった。