泣いていたのは、僕だった。
ビルは七階建てだった。
「真司、だめだ。エレベーターいかれちまってる。」
「階段しかなさそうだね。あ……」
櫻井はまたしても一人で突っ走っていった。
「マジ落ち着きのねー野郎だな。」
「はははっ、翔一に言われたら終わりだね。」
「…どういう意味だよ?」
「ん?そのままの意味。それより櫻井追わないと」
「むっかつく!後で覚えとけよ、真司!!」
階段を上がっていく。
途中各々の階で倒れている者が数名見受けられた。
おそらく子山の仲間たちだろう。
それにしても……
誰一人死んでいない。
気絶こそしているが、全員息がある。
この人数相手にこんな器用な真似をするなんて…。
「真司ーぃ!おいてくぞ!!」
次へと上がる階段で翔一が叫ぶ。
「ああ、うん。」
矢代創は本当に最初から子山だけが狙いだったみたいだ。