泣いていたのは、僕だった。
「……隆」
階段を駆け上がってきたのか、息を切らした隆が立っていた。
「邪魔しないでください。」
「ダメだ!!」
「――!?」
今度こそ引き金を引こうとすると、隆の声と同時に何者かが僕の手を蹴り上げた。
手にしていた銃が弾け飛ぶ。
「やめろよ」
「君は……神木 翔一」
僕の手を蹴ったのは神木翔一だった。
「アイツいつの間に……」
「翔一は身体能力が優れてるから。」
隆の後ろからもう一人、見知らぬ男が顔を覗かせた。
「なんでこんな事すんだよ?」
「これが命に代えてもやらなきゃならない事だからですよ。」
神木が僕の胸ぐらを掴む。
「俺、お前のこと格好いいって思った。でもやっぱちげー。格好良くなんかない。」
「知っていますよ。僕は狡くて、醜くて、弱い人間だから。」
神木の手を振り払う。
「違うだろ。」
隆が僕に近づく。
「お前は優しい奴だよ。」
そう言って隆は僕を殴った。