泣いていたのは、僕だった。
俺と真司が車を降りたとき、絢音はすでに後藤の手の届く位置にいた。
「パパ、おかえりなさい!」
「お前…」
絢音は無邪気に抱きつく。
後藤は険しい顔をして、
「何を勝手に出歩いているんだ!?」
と声を荒げた。
「ご、ごめんなさい…」
「お前はッ!!」
後藤が手を挙げ、絢音に向かって振りかざそうとした。
「――!?」
「やめろよ、おっさん」
それを止めたのは翔一だった。
翔一の方が力が強いらしく、後藤は腕を外せない。
「何だよ、てめーは?他人様のことに口出してんじゃねーよ!」
「そうはいかねーよ。自分の子供だろ!?もっと大切にしてやれよ!」
「うるせーんだよ!」
空いていたもう片腕が、翔一目掛けて伸ばされた。
翔一は後藤の腕を放し、距離をとる。
「っぶねーな。」
その翔一の側に俺と真司は歩み寄った。
「どーも。後藤さんで間違いない?」
真司はニコニコと後藤に問いかけた。