泣いていたのは、僕だった。
「隆くんは絢音ちゃんを助けたい?」
「当たり前だろうが」
「それはどういう意味の助けかな?」
どういう意味の助け…?
「んだよ、それ」
真司を見ても、表情は変わらずいつも通り。
「隆くんは今、どうやって絢音ちゃんを助けたい?」
「それは、後藤の奴を捕まえて……」
「その後はどうする?絢音ちゃんは犯罪者の娘、という肩書きを背負わなきゃならない。それにまだ幼い。父親を求める毎日を過ごす事になる。後藤を殺しても同じだね。」
「………」
「だからと言って、後藤を見逃すわけにはいかない。このまま一緒に行かせてあげた方が、絢音ちゃんにとっては一番幸せかもしれないけどね。でもそれはきっと、あの子の為にはならない。」
俺も翔一も真司が何を言いたいのか分かっていたから、何も言わなかった。
「人が人を救ったと思うのは、ただのエゴにすぎない。誰かを救う、なんて誰にも出来やしないんだよ。」
「………お前、創から何か聞いたろ?」
「さぁね。僕は僕の考えを言っただけだよ。…翔一、」
真司と翔一は視線を交わし、翔一は何かを理解したように頷いた。
その間に後藤は俺達の車たどり着いた。