泣いていたのは、僕だった。
あれから一年…俺は
「いくらだった?」
「十万」
未だ真司を殺せずにいる。
真司の返答に俺は肩を落とした。
「たったの十万かよ…」
「今回は手強かったのにねぇ」
「マジ、金額基準おかしいんじゃねーの?」
俺はあの日から真司と共に暮らしている。
もちろんいつでもコイツを殺せるように。
でも出来なかった。
真司の強さは口だけじゃなかった。
何度失敗したことか…。
真司の強さは多分、この仕事のせい。
真司は凶悪犯を対象とした『掃除屋』をやっている。
簡単に言えば殺し屋だが、無益な殺しをする訳じゃない。
全て賞金が掛けられた、警察からの依頼が多い。
「警察もケチだよな。もう少し弾んでくれてもいいのによ。」
「たーしかに。二人暮らしにはキツい収入だね。」
現在は俺も手伝いをしている。
一応世話になってるし、それに……
この仕事してれば強くなれるかなって。
「あーあ、早く次の仕事来ねえかな。」
「世の中、そんな凶悪犯ばかりだったら困るじゃない。」
通帳と睨めっこしていた真司は苦笑した。
「でもさぁ」
反論を述べようとした瞬間、真司の携帯が鳴った。
やれやれと吸っていた煙草を消して、真司は携帯を手にした。
「もしもーし」
会話の流れからするに、相手は警察で間違いなさそうだ。