泣いていたのは、僕だった。



「じゃあお前ならどう綾音を助ける?」
「僕?僕は人を助けたりしない。僕はただ…」


後藤が車のドアに手をかけた瞬間。


後藤が車のドアに意識を向けたその僅かな隙に、真司の懐から取り出された銃が火を噴く。

それと同時に翔一が走り出していた。



真司が放った弾は背後から後藤の心臓を貫く。


赤黒い血が宙を舞う間、翔一は綾音の目を塞ぎ、なにも見えないように抱きしめた。



「僕の仕事をするだけだ。僕は掃除屋だからね。」
「…………。」



迷いがない。

いや、もしかしたら……


真司はどこかで心をなくしてきたのかもしれない。




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