泣いていたのは、僕だった。



この事件は後藤の命と共に幕を閉じた。

綾音は皆保警部の配慮の元、施設に入り里親を探すことになった。


時々翔一が様子を見に行っているようだ。



結局、真司のやったことは正しかった。
少なくとも迷って動けなかった、答えを出せなかった俺よりは……。



「また、考え事ですか?」



創がホットコーヒーの入ったマグカップを差し出して、俺に手渡す。


「らしくないですね。」
「まぁな。……何年経っても、俺は変わらねーな。図体だけデカくなって、結局は誰も救うことなんて出来ない。」
「――そうでしょうか?」



コーヒーを一口啜って、創は俺に微笑む。



「僕はアナタに救われましたよ。」
「……………」
「隆が僕を呼び止めてくれたから、今の僕がいるんです。」
「………んな大したことした覚えねーよ。」
「いいんですよ。それで」



それ以上創は何も言わず、俺はコーヒーを口にした。




< 51 / 150 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop