泣いていたのは、僕だった。
この事件は後藤の命と共に幕を閉じた。
綾音は皆保警部の配慮の元、施設に入り里親を探すことになった。
時々翔一が様子を見に行っているようだ。
結局、真司のやったことは正しかった。
少なくとも迷って動けなかった、答えを出せなかった俺よりは……。
「また、考え事ですか?」
創がホットコーヒーの入ったマグカップを差し出して、俺に手渡す。
「らしくないですね。」
「まぁな。……何年経っても、俺は変わらねーな。図体だけデカくなって、結局は誰も救うことなんて出来ない。」
「――そうでしょうか?」
コーヒーを一口啜って、創は俺に微笑む。
「僕はアナタに救われましたよ。」
「……………」
「隆が僕を呼び止めてくれたから、今の僕がいるんです。」
「………んな大したことした覚えねーよ。」
「いいんですよ。それで」
それ以上創は何も言わず、俺はコーヒーを口にした。