泣いていたのは、僕だった。
街灯の少ないこの道を照らすのは、月光だけ。
月の明かりだけが道標。
だから僕はこの町が好き。
都会は眩しすぎる。
そう……まるで、太陽のように。
家から200m離れた道を曲がる。
その道から延びる路地裏。
そこは翔一を拾った場所。
あの雨の日、高飛車な瞳をした彼を僕は拾った。
理由はない。
ないことにした。
僕はその路地裏に、ちょうど翔一がそうしていたように座り込んだ。
翔一を拾った理由。
本当は、“彼”が戻ってきたのかもしれないと思ったんだ。
「案外、忘れられないもんだね。」
――月はまだ頭の上。