泣いていたのは、僕だった。
「コンビニで煙草買わないとなー。隆くんの分も。」
「もうこれを機に禁煙しろって。」
“禁煙しろよ”
って言ってたな。
「………考えとく。」
「する気ねーな。」
あの日、路地裏で翔一を見つけたとき……
心のどこかで千明を見た。
「創が麻婆豆腐作って待ってるって言ってたぜ。」
「そう。じゃあ早く帰らないとね。」
千明、思い出って案外忘れられないものだよ。
「……忘れたくてもね。」
「ん?何か言った?」
「何も。月が明るいなって。」
帰り道一歩一歩進む度、一つ一つ思い出す。
たまには悪くないだろう?
千明、地獄っていいとこだった?
僕もそう遠くない未来、そこに行くから。
その時は思い出話でもしよう。
「真司!俺、新発売のアイス食いたい!」
「じゃあ、みんなの分も買おう。」
「やりー!」
月は僕らの背を照らす。