泣いていたのは、僕だった。
創と隆が戻る前に俺達は家を出た。
ジャケットの懐には、家を出る前に真司から渡された黒い銃。
ハンドガンだ。
“使わずに済むといいね”、そう真司は言った。
「なぁ」
「ん?」
隣を歩く真司に、ふと尋ねたくなった。
「どうして人は人を殺すのかな?」
「さぁね。」
真司は笑った。
「その問いに答えなんて存在しないんじゃないかな。」
「存在しない、か」
「何か理由を付けるとするなら……」
真司は空の月を仰ぐ。
「自分が生きている、確かなものが欲しいのかもね。」
「他人の死で、自分の生を実感するって?」
「自分が可愛い生き物なんだよ、人間ってのはね。もちろん僕も」
俺も空の月を仰いでみた。
「真司って自虐的な物言いするよな。けど、その意見には賛成ー。」
「早く終わらせて帰ろう。」
「おう!帰ったら飯だな。」
空の月はどんな時も変わらず、俺達を照らしている。