泣いていたのは、僕だった。




暗い路地裏に二つの人影。

一人は地面に座り込み、一人は銃を突きつけていた。


「た、助けてくれ!俺が何したって言うんだよ!?」
「何って?そうね、何もしてないわね。」


銃を持っている方が乃南で間違いなさそうだ。


「おい!やめろよ!!」
「……あら、邪魔な人たちが来ちゃったわね。」


乃南は肩を竦めて笑う。


「久し振りね、真司」
「どーも」


呑気に挨拶を交わす真司に、俺は困惑した。


「え!?お前知り合いなの!?」
「うーん…まぁ、顔知ってるぐらい。」



真司の返答に、乃南は口をとがらせた。



「冷たいじゃない。一応先輩でしょ?」
「元だけど。」
「生意気なところ、変わってないわね。」



親しげに話す二人。


「真司、先輩って?」
「乃南さんは僕達と同業者だったんだ。」
「つまり、掃除屋?」
「そ。元だけどね。」


乃南を見ると、ニコッと微笑みかけられた。


人を魅了するような微笑みとは対象的な彼女の行動。


男に突きつけた銃は、獲物を捕らえて離さない。


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