泣いていたのは、僕だった。
「よろしくね。坊や」
「坊やじゃねーよ!」
「元気いいわねぇ。」
笑う顔。
この表情どこかで見たことある。
「乃南さんも落ちぶれたね。こんな所で殺人だなんて。」
「そうかしら?あなた達だって私と同じよ。」
乃南は俺たちを見ながら、引き金を引いた。
その瞬間火を噴いた銃の先は、しっかり男を捕らえ、男の体はゆっくりと地面へ倒れ込む。
「お前…!」
思わず掴み掛かろうとした俺の肩を、真司が引き留める。
「冷静に。油断しないようにって言わなかった?」
「………っ」
真司は乃南の方を向き、微笑む。
「乃南さん、大人しく捕まってくれない?」
乃南は笑ったまま、ゆっくりと銃をこちらに向けた。
そうだ。
この笑った表情、真司と似ているんだ……。
「残念だけど、それは出来ないわね。同類のあなた達に私を捕まえる権利はないわ。」
「同類だと?ふざけんな。てめーと同じな訳ないだろ!!」
「同じよ。まぁ…そうね、アナタはまだ違うみたい。」
言葉は俺に向けられたようだ。
まだ、と言う言葉が引っ掛かる。
「これから先もお前と同じになんかならねーし。」
「そう?でもあなた……私と真司がどこか似ていると思わなかった?」
「え………」
俺の心を見透かしたような発言に、動揺してしまった。
「人を殺すことに慣れすぎると、感覚が麻痺してくるのよ。」
「――翔一!!」
銃声がしたとき、俺の視界は黒に覆われた。