泣いていたのは、僕だった。
―創side―
腕時計で時刻を確認する。
午前二時十四分。
そろそろ行こうか。
僕はゆっくり立ち上がった。
やっと終われるよ。
僕ももうすぐ逝くからね。
もう少し待っていて。
壁を背に500m先のビルを見る。
あの中に子山が……。
唇を噛みしめ、両手を強く握った。
絶対アイツだけはこの手で…。
足を踏みだそうとした瞬間、後ろから肩を叩かれた。
反射的に距離をとって振り向く。
「あ…悪ぃ。驚かすつもりじゃなかったんだけど」
申し訳無さそうに立っていたのは、まだあどけなさの残る青年だった。
僕より頭一つ分背が低く、大きな目が印象を幼くさせている。
歳は多分年下…十九ぐらいか?
「いえ。何か僕に用ですか?」
「あ、うん。今この辺に凶悪犯が潜んでっから、避難した方がいいぜ。」