泣いていたのは、僕だった。



俺も隆も数秒の間、その場で立ち尽くし、そしてゆっくりと振り返った。


ドアに寄りかかる一人の男の姿。


右手には煙が上がる黒い銃が握られている。



「――真司!」
「お前、起き上がって大丈夫なのかよ?」



俺と隆は慌てて駆け寄る。


近づいた俺たちに


「うーん…ダメかも。」



と笑って、覆い被さってきた。


「おい!?真司!?真司!」
「……落ち着けよ、翔一。寝てるだけみてぇだ。」
「なんだ……よかった。」



顔をのぞき込む。

すごい汗だ。

寝てればよかったのに。




俺はまた………



――コイツに守られた。



「翔一、皆保って奴に連絡して帰ろうぜ。腹減った。」
「うん………」


俺は皆保のおっちゃんに連絡をいれ、死体処理を任せ、アパートを後にした。


最後に見た乃南の顔は満足げだった。



< 88 / 150 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop