泣いていたのは、僕だった。
ベッドの脇に座っていた俺の頭に、真司は横たわったまま手を伸ばしてきた。
その手は厄介なことに優しく、俺の頭を撫でた。
「ありがとう」
「――や、止めろよ!俺はガキじゃない!!」
なんだか気恥ずかしくて、手を振り払う。
「ごめん、ごめん」
と言いつつも、真司はクスクス笑っている。
ほら、真司はやっぱりアイツと違う。
こんな顔も出来るんだから。
「目覚めたって創に言ってくる。」
立ち上がった俺の手を真司は取った。
「んだよ?」
「この手を汚しちゃダメだよ。僕みたいにならないで。」
真司らしくない発言に面食らった。
「な、んだよ…それ。」
「約束して。この世でその手を汚すのは僕を殺すときだけだって。」
怪我のせいかもしれない。
こんな発言をするのは。
「……分かったよ。だからお前も約束しろ。俺が殺すまで、何が何でも生きるってな。」
「……うん。」
いつか、その時が来たら……
きっと真司は笑って死んでいくんだろう、って俺は思った。