泣いていたのは、僕だった。
そうですか、と創は笑った。
「毎日手を伸ばしてた。誰か、誰か!って。その手を掴んだのは真司だった。悔しいけど、俺はアイツに助けられた。」
「……本人には言わないんですか?」
「うん。」
言ったところで真司は信用しないだろうしな。
「じゃあ真司が助けを求めたその時は、」
創はニコッと微笑んだ。
「一緒にその手を掴んであげましょう。」
「うん。そーだな。」
部屋のドアが開いて、不機嫌な隆の顔が覗かせた。
「ガキ!呑気に寝てねーで後始末しろ!!」
「ガキじゃねーし!」
「周り見えない奴なんかガキだろ。ったく……一人の世界入り込みやがって」
「それは………」
言葉に詰まった俺の代わりに、ドアの向こうの人物が口を開いた。
「よーするに、隆くんは翔一に一人じゃないよって言いたいんだよねー?」
「うるせーよ。病み上がり」
真司がドアの隙間から顔を見せた。
「おはよう、翔一。気分はどう?」
「ん。平気」
「じゃあ部屋片づけるの手伝ってくれる?想像以上に散らかってるから。隆くんの働きが悪くて終わらないんだ。」
言い合いをする真司と隆。
それを見て笑う創。
幸せってもしかしたら、こういう事を言うのかな。
俺はそういうのよく分からないけど、なんとなくそう思った。