消えない、消せない


「君ってさぁ…
いつも何を聴きながら、何を読んでるの?」

「ロックを聴きながら太宰を読んでる。」

「太宰が好きなくせに、ロックミュージックも好きなんだね!」

「…太宰を好きな人間は、ロックを聴いちゃいけないのか?」

「教室の隅でいつも独りで本を読んでいるんだもの、てっきり世の中を憂いているのかと思っていたけど…」

「…」

「よかった、世の中を楽しんでいるんだね!」

「…!」


 ずっと独りで音楽を聴いて本を読んで、勝手に外界との分厚い壁を作り自分だけの世界に閉じこもっていた俺の心に…彼女は面白いほど簡単にするりと侵入してきた。



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