マスカレードに誘われて
「ご、ご機嫌よう、キース」
「ええ。貴女様はご機嫌そうで何よりです」
笑顔を絶やさないのが逆に怖い。
キースは二人の後ろに回り込むと、彼らの首根っこを掴んだ。
「さぁ、もう逃がしませんよ」
「離せっ!」
ロイが暴れる。
それでも、びくともせずに、キースは彼らを離さない。
家政婦が呆然と見ている中、彼は頭を下げると二人を引きずって歩き出した。
「今日は皆さん、ピリピリしていらっしゃいます。ですから、なるべく部屋で大人しくしていてください」
「分かった!分かったから離して!」
「いえ、しっかりと部屋までお送りしますよ」
柔らかく微笑みながらも、首根っこを掴む力が強くなる。
この状態では、どう足掻いても逃げられない。
「こんの暴力執事!!」
ロイの悲痛な叫び声が、広い廊下に響き渡った。