マスカレードに誘われて

暫しの沈黙。
そして。

『……何故、そんなに焦る?』

静かな低い声が、ロイの耳に届く。
ロイは鎧を見据え、ポツリと呟く。

「……だから」

『何?』

「彼女が……イヴが大切だからっ!!」

『……』

「信頼できる、数少ない人だから!!殺されるわけにはいかない!!」

それだけ言い残すと、彼は鎧に背を向けて階段を駆け上がっていく。
彼の後を、キースがついていく。

鎧は物音一つ立てずに、二人の背中を見送った。

「ロイ様」

ロイの背中に向かって、キースが静かに呼び掛ける。
彼はちらりと後ろを振り向いた。

「何?」

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