マスカレードに誘われて

「しょうがないよ。後世に残すためには、多少の犠牲も厭わないということだ」

「そんな……」

「さて、少し喋りすぎたようだ」

グランド公が咳払いをする。
彼はおもむろにイヴへ近付くと、その顔に手を伸ばした。

その途端、ロイが彼に走り寄った。
そして、その肩を掴む。

「イヴに触れないでいただきたい」

「……」

肩に置いた手が震える。
その手に、どんどんと力が加わっていく。
静かな怒りが、ロイの中でふつふつと沸き上がってきた。

グランド公は彼を一瞥すると

「穢らわしい」

と、冷めた声で告げて手を払い除けた。

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