マスカレードに誘われて

四面楚歌。
彼を温かい目で見る者は、誰一人としていなくなった。

諦めた方がいいのだろうか。
しかし、ここで諦めたらイヴはどうなる?
殺されるに決まっている。

この場を打開する為の最善の策を練るが、この状態では頭も動かない。
彼は白くなるほど手を固く握りしめ、悔しそうに俯いた。

「……誰が味方はいないと決め付けましたか」

「……グランド公が」

「そう言う問題ではありません」

人混みを押し退け、キースがロイの隣に立つ。
それでも彼は顔を上げず、地面を見つめたままだ。
そんな彼の頭を、キースは優しく叩いた。

「私は何があろうとも、貴殿方を見捨てません。先程の御言葉、私は信じております」

「……!」

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